顧客を組織の中心に置く“CCD”が全社員に浸透。意思決定の最優先事項は顧客の声

受賞実績や第三者からの声が、クロージングを後押し――クラウドサインのITreview活用とは

本記事のサマリー

《 背景・課題 》
・チャットサポートに寄せられた声やセールス、カスタマーサクセスのヒアリングだけでは、サイレントマジョリティーとして埋もれてしまっている声もあると感じていた
・自社サービスに対する社会的な認知や信頼性をより強化したい。実際に使われていて、かつ評価されている点を、第三者に証明してもらいたかった

《 ITreview利用の効果・メリット》
・週次でレビュー全件にコメントを返信。特筆すべきレビューは社内のSlackで全社共有し、プロダクト改善に活用
・有償プランで、レビューを営業資料に掲載、展示会でITreview Grid Awardのバッジを掲示、パンフレットに掲載など二次活用。効果的なマーケティング施策を実践
・ITreview Grid Awardの受賞実績や第三者からの評価の声が、セールスのクロージングを後押し
・「こういう点が良い」というレビューコメントは、開発メンバーの日々の業務をエンパワーしてくれる。社内の活気や士気を高めることに貢献


 2015年10月のリリース以来、電子契約サービスのパイオニアとして今や導入企業が5万社を超えている「クラウドサイン」。タブレットで簡単に対面の申込みや契約ができる「クラウドサインNOW」や、紙の契約書もまとめて管理できる「クラウドサインSCAN」などの新サービスも続々と登場し、電子契約利用企業の80%*がクラウドサインを利用するという、まさに市場の中心に位置するサービスだ。

 その成長を支えているのは「間違いなく、お客さまからいただいた声」だと、同事業部Head of Customer Successの岩熊勇斗氏は言う。同社はレビュープラットフォーム「ITreview」もローンチ早々に利用を開始し、全てのレビューを顧客の声として全社に共有。また、レビューや評価実績を営業資料やWeb広告のバナーに活用し、 トライアルユーザーを獲得したという実績から、2019年「ITreview Customer Voice Leader」に選出された。

 そんなクラウドサイン事業部では、顧客の声にどう向き合い、どのように事業へ生かしているのか。さらに、ITreviewをどのように活用して成果を創出しているのか。岩熊氏に詳しくお伺いした。

*電子契約サービス主要12社において、有償・無償を含む発注者側ベースでの利用登録社数 (株)矢野経済研究所調べ  2019年7月末現在

真摯に顧客の声と向き合う――その証として、顧客要望と機能開発状況のリストは全世界へ公開

――貴社はこれまで、顧客の声をどのように収集していたのでしょうか?

岩熊氏:お客さまの声が最も数多く集まるチャネルは、プロダクトサイトの右下に出しているチャットサポートの窓口です。そこには既存顧客のお客さまだけでなく、導入検討中のお客さまからも、さまざまな問い合わせや相談が来ます。それを全て社内のSlackで共有しており、クラウドサイン事業部内の全社員がそこを確認できるようになっています。いただいたお客さまからの声は、全員が読むという決まりごとにしています。

――顧客からの声を社員全員が読むというのは、なかなか他社ではない取り組みですね

岩熊氏: 私たちクラウドサイン事業部では、弁護士ドットコムとは別にミッション、ビジョン、バリューを設けているのですが、その中でとても大事にしているのが、「CCD(カスタマーセンタードデザイン)」というバリューで、私たちの組織の中心、意思決定をする中枢機関をお客さまにしましょうという考え方です。よくいろいろな会社が「お客さま第一」と抽象概念として唱えられていると思いますが、私たちは、何かを決める時や優先順位をつける時に、お客さまが欲しているかどうか、お客さまへメリットを提供できるのか、ということを最優先基準として意思決定をしましょうというもの。このCCDという考え方が社内に浸透しているので、お客さまからいただいた声を全員が読むというのは、強制ではなくそもそもの文化としてずっとやってきています。

――集めた顧客の声をどのように活用されていますか?

岩熊氏: マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、顧客と接点を持つそれぞれの部門が、顧客から受けた声や要望をプロダクトにどう反映させるのかというフィードバックを常に行います。どういうお客さまのどういったご要望で、例えば既存のお客さまであれば、そのお客さまのMMR(月間定額収益)がいくらで、この改善がないとチャーン(解約)をしてしまう可能性がどのくらいで、いくらぐらいのチャーンインパクトがあるのか、あるいはこれが実装されればエキスパーションアップセルが見込め、それがいくらぐらいのビジネスインパクトなのか、そういったところから優先順位をつけ、定性情報とあわせて、開発のプロダクトオーナーとディレクターチームに共有します。

――貴社では、顧客からの要望と機能開発状況のリストを公開されていますよね?

岩熊氏: はい。こういう要望をお客さまからいただいて、今この機能が開発検討段階になっていますという状況はスプレッドシートにまとめて、全世界に公開しています。競合のベンダーさんに見られるリスクもあるのですが、私たちにとって最上位であるお客さまにとって価値があるからやりましょうという判断で公開しています。

評価を受けた印であるバッジや、カテゴリー内の比較軸、レビューの二次利用などがITreviewのメリット

――貴社はどのような経緯で、ITreviewを利用されたのでしょうか?

岩熊氏チャットサポートやセールス、カスタマーサクセスでのヒアリングだけでは、サイレントマジョリティーとして埋もれてしまっている声もあるだろうなということは、自社の課題として感じていました。私たちのサイトに向かって発言はしないけれど、客観性のあるレビューサイトであればそういった方々の声も集められるのではないかと。より多くのお客さまの声を収集する媒体として価値が高いと判断し、ITreviewを利用し始めました。

 電子契約のどのサービスを選ぶか意思決定する際、やはり「他の誰かが使っている」「シェアが高い」という情報がかなり重要な決め手になります。聞いたこともないサービスを導入するのはかなり難しく、社会的な認知や信頼性がすごく大事だと考えています。実名でどの会社が使っています、こういうレビューを書いています、こういう評判ですというものを見て選ばれる可能性というのが、今後ますます高くなるだろうと考えています。実際クラウドサインが使われていて、かつ評価されていますとい事実を、レビューの形で第三者に証明してもらいたかったことも、ITreviewを導入した理由の1つですね。

――顧客の声を集めるだけならFreeプランでもできますが、貴社は有償のPremiumプランを導入されています。どんなメリットを感じてPremiumプランを選択されたのでしょうか?

岩熊氏: ITreviewから評価を受けた印であるバッジや、カテゴリー内の比較軸(ITreview Grid)、レビューの二次利用などがメリットを感じたポイントです。私たちのマーケティング施策において、お客さまのレビューを営業資料に掲載します、Web広告や展示会でバッジを掲示します、パンフレットに掲載しますということが確実に効果的だという判断で、有償のPremiumプランを契約しています。

Web広告バナーや営業資料で受賞歴を紹介

――ITreviewに寄せられたレビューはどのように活用されていますか?

岩熊氏: まず、チャットサポートを担当するカスタマーリレーションチームが、いただいたレビュー全件に週次で目を通し、全件返信させていただいています。その中で特筆すべきもの、ポジティブなものもネガティブなものも、彼らのチームの活動として社内のSlackに投稿しています。今はまだカスタマーリレーションチームが全社員に届けたいと思うレビューを届けているという状態です。

 顧客の声を受け止めることと、プロダクトに反映することは、ある程度きちんと分けないといけないと思っています。一部のお客さまの強い声であったり、エキセントリックな表現をされるお客さまのネガティブレビューであったり、それに引っ張られてプロダクトを寄せていくことはすべきではないと思っています。あくまで1つの声ですよ、生の声ですよという範囲に意図的に止めています。

 チャットサポートでの会話を全社員に見てもらっているのも、見てもらうだけでよく、それで判断してくれという話ではありません。この声をプロダクトに反映させてほしいのは、こういう理由でこういう順番です、おそらく今取れているデータに基づくと、これを実装するとこれだけのインパクトがあると、そこは定量データとしてきちんとカスタマーサクセス部門からフィードバックする。その分別は意識していますね。

――カスタマーリレーションチームの方々は仕事が増えて大変になりましたね、取り組むに当たり社内での反発などは起こりませんでしたか?

岩熊氏: ITreviewのレビューをどこで対応してもらうかと考えている時に、カスタマーリレーションチームのメンバーがウチでやりたいですと言ってくれました。だから私は、このチームでやるというジャッジはそもそもしていなくて、特段の苦労もなかったですね。自ら名乗り出てくれたことは、CCD(カスタマーセンタードデザイン)の考え方が、本当に社員へ浸透していると、うれしくなったエピソードでもあります。

セールスのクロージングをレビューが後押し。良いレビューは、開発チームのエンパワーにも

――ITreviewを活用することの具体的な成果はありましたか?

岩熊氏:日々営業活動を行なっていると、例えば営業が大型案件を受注しましたという時には、競合他社様とコンペになる機会がありますます。そういった時に、もちろんプロダクトが使いやすいとか、法的なロジックがきちんとしているとか、サポート体制が安心できるとか、いろいろな評価ポイントがあるのですが、やはり最後に決め手となるのは、圧倒的な実績があるということです。

 もともと公開している導入企業数や契約締結件数のみでなく、実績の1つとして、受賞実績や第三者からの良かったという声が、セールスのクロージングを後押ししているとは聞いています。

――チャットサポートへの声と、レビューとして投稿された声の違いは、何かありましたか?

岩熊氏: チャットサポートへ寄せられる声は、「これはできないのですか?」「この機能はないのですか?」「作ってください」が大半を占めています。わざわざ「クラウドサインは良いですね」ということをサポートに電話やメールで伝えるということは、残念ながらまずないので。

 それに対して、ITreviewに「こういう点が良いです」とい うレビューコメントがあるのは、開発メンバーの日々の業務をエンパワーしてくれるものになっているかなというのはあります。私も読んでいて、うれしいですし。なかなかそういう声に触れる機会というのは、多くはないですから。

 日々手を動かしている開発のメンバーは、営業やカスタマーサクセスのバイアスがかかった情報よりも、あのレビューのほうが、本当に評価されているということを実感していると思います。社内の活気だったり、士気を高めたりすることには寄与していただいているなと感じます。

――特に印象に残ったレビューはありますか?

岩熊氏: 良かったというポジティブなレビューをいただけるのは感謝しかないのですが、ほとんどのお客さまが「もっと電子契約の文化を浸透させてくれ」と書かれていて、それがすごく印象的ですね。どれだけカスタマーサクセスが、活用方法や社内の浸透のさせ方、取引先への説明方法、法的な安全性を説明するロジックの伝授などいろんな施策を打っても、結局「知られていない」というのが全てを破壊しつくしてしまうというのは、あのレビューの並びを見て、まざまざと感じましたね。

 プロダクトを引き続き磨きつつ、より知名度を上げて、契約手段のスタンダードとして認知されるよう、私たちが市場拡大をリードしていきたいと思います。

――レビューを多く集めるための活動はされていますか?

岩熊氏:レビューを書いてくださいという呼びかけは、メルマガなどで何度かお願いをしたというのはありました。あと、ユーザー会の場などでも、ぜひ書いてくださいと告知させていただいたことはあります。ただ、こちらがお願いしなくても、勝手にあちこちから書いていただく状態になるのが理想だと思っています。もちろんネガティブな声だったり、まだ足りていない部分を痛烈にご指摘いただき落ち込んだりすることはありながらも、他のサービスと比較検討するにあたって、やっぱりクラウドサインはいいねと思っていただける自信が一方であるので、そこについて、ほめてくださいという訴求は一切せずに、フラットに書いてくださいというスタンスでいたいなとは思っています。

――最後に、ITreviewに対してのご要望やご期待などをお聞かせください

岩熊氏: 先日の「ITreview 2019」の講演で、米国ではレビューサイトで比較検討してから購買活動に移る、そこの評価が受注率に寄与する、というお話を伺いました。ぜひ日本もそういう状態にしてくださいとお願いしたいですね。それがたぶんお客さまにとってもかなりメリットがあると思っています。

 マーケティングメッセージや、営業からのメッセージだけで意思決定するというのはとても情報非対称な状態だと思うので、レビューサイトにある顧客の声で比較できればいいなと思います。そうなれば、ベンダーは変に取り繕って受注するのではなくて、いいサービスを提供することだけにフォーカスできるので、すごく健全な未来だと思います。

 あと、これはITreviewへの要望ではないですが、私たちのサービスを導入して、声を寄せてくださっている法務の方々が、もっと評価される世界をちゃんと作っていきたいです。

 多くの法務の方は本当に大変な仕事をこなされているのに、失敗すると怒られ、失敗しないとギリギリ合格点みたいな環境にいらっしゃいます。クラウドサイン事業に取り組んでいると、法務の方々がどれだけ会社のために尽くし、考え抜いて、落とし所を検討して……とすごい仕事をされているか実感します。その方々が報われる場を私たちが作っていく。そういう思いがここ1~2年で、さらに強くなりました。

既存顧客の声で新規顧客を呼び込むレビューマーケティング

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