Best Software in Japan 2022
受賞者インタビュー

Best Software in Japan 2022
1位受賞

(後編)

Best Software in Japan 2022  1位受賞 ユームテクノロジージャパン株式会社様

毎年ITreviewから発表しているBest Software in Japan。2022年6月に発表された本アワードで、ユーザー評価をもとに本年1位に選出されたのは、ユームテクノロジージャパン様が提供する「UMU(eラーニング・LMSカテゴリ)」でした。
ユーザーからの圧倒的な高い評価を受ける「UMU」。彼らから見たeラーニング・LMS市場がもつ現在の課題と、その先に見据える世界観とは。また、SaaSビジネスを運営する経営者としてどのように顧客の声に向き合っていくべきか。
ユームテクノロジージャパン代表取締役松田様とラーニングコンサルタント 金融事業部 本部長志村様を招いて、弊社代表取締役黒野との対談を前後編に分けてお伝えします。

ユームテクノロジージャパン
株式会社 様

  • 代表取締役 松田しゅう平

    代表取締役

    松田 しゅう平様

  • ラーニングコンサルタント 金融事業部 本部長 志村 智生

    ラーニングコンサルタント 金融事業部 本部長

    志村 智生様

※以下、敬称略

前半のインタビューでも少しお聞きしましたが、今回Best Software in Japan2022の1位を受賞したことで、社内ではどのような反応が見られましたか?
松田:こういった評価を第三者からもらうことは、とても大きいことです。弊社は、プロダクト愛が強いスタッフが多いこともあって、約5,000製品ある中で1位を取れたことはインパクトをもって社内に広がっていきました。自分たちから家族や友達に自慢している社員も多くいるようです。また、お客様からもお祝いの声を数多くもらうので、ものすごく内側のいいエネルギーになっていると感じています。
黒野:経営者の立場としては、こういうレビューや口コミに関する受賞をきっかけとして、社内全体が顧客に向き合う重要性を理解するという風に、社員の意識が変化するのはとてもありがたいことですよね。
たとえば、直接接点を持って顧客の声を意識している営業だけではなくて、顧客接点の少ない開発やマーケ担当も、こういったきっかけがあれば顧客を意識するようになります。もちろん経営者は、耳に痛い声も含めて意識しなければなりません。しかし、今回の受賞の反応を聞くと、すでに会社全体として顧客の声を真摯に受け止める空気ができているのが素晴らしいと思います。
同様に、今回受賞をしたことで社外からはどのような反応がありましたか?
松田:実際の数字面でいうと、問合せ、つまりHPのオーガニックの問合せが、受賞直後は7倍に増えました。もちろん、ずっと7倍が続くわけではありませんが、あの発表から1カ月少々経った今でも、受賞前の3倍程度の問合せをいただいています。しかも、大手企業様からの問合せも数多く含まれており、マーケティング的にもものすごくありがたい効果を実感しています。
黒野:今回、Best Software in Japan2022は、ダイヤモンド・オンラインさんで記事(https://diamond.jp/articles/-/303925)にも取り上げてもらっていたりするので、大手企業の担当者の方にも目に留めてもらいやすかったのかもしれませんね。
松田:確かに、受賞しただけでなくメディアを通してしっかり拡散してくれているのはありがたいですね。あと、自社から発信していくという意味では、受賞ロゴを使わせてもらえるのが大きいです。営業が新規商談をするときなども、受賞ロゴが印籠状態になっていると聞いています。今回の受賞をきっかけに、新たな道が大きく開けていると感じています。
黒野:HPのTOP画像でも使ってくれていている所をお見掛けしました。本当に様々な場面で活用していただき、ありがとうございます。
続いて、経営者の立場として顧客の声への向き合い方についてお聞かせください。SaaSビジネスの経営者として、顧客の声に向きあう一番のメリットはなんだと思いますか?
松田:まず、会社を経営していくためには、マーケットフィットが一番重要だと考えています。その中でも、SaaSビジネスは、自分たちの製品の方向性を継続的にアジャストしていくことが求められるビジネスモデルです。
顧客の声に向き合う一番のメリットは、方向性を見極めて調整していくために必要な判断材料を得られることだと思います。もちろん、自分たちでNPSなどの調査することも大事ですが、ITreviewのようなプラットフォームを使うことは、第三者機関に出ている顧客の生の情報をもとにして判断できるという点で非常に使いやすいです。
いずれにせよ、SaaSビジネスを経営する以上、顧客の声は常に向き合わなければならないものではないでしょうか。
黒野:みんな一緒だと思いますが、SaaSは常に製品を進化し続けていく必要があります。競合製品や、新たに参入してくる製品、機能拡充によって他領域から食い込んでくる製品などもいる中で、既存顧客の契約を取られたり、解約されたりすることも必ずあります。解約を減らし、新たな顧客を獲得していくために、顧客の声に向き合うことで市場を見極めていくことは、どこの業界でも必要ですね。
逆に、顧客の声と向き合っていく中で難しさを感じることはありますか?
松田:正直、難しいと感じることはあまりありません。
ただ、顧客の声と向き合う以上、必ずネガティブな声が出ることはあります。その時に、どういう態度で臨むかということは明確にしています。これはユームテクノロジージャパンというよりも、グローバルな開発チームすべてを巻き込んで、あがった声に対して、徹底的に原因追求と解決をやり切るというマインドがあります。
これはレビューに限らず、クレームが来た時なども含めて、徹底的に全員で解決するという姿勢は共通しています。いわゆる再発防止という所に関しては、妥協することなく会社として徹底しています。
黒野:ネガティブな声に向き合うことはとても大事なことですが、一方で扱い方は気をつけなければなりませんよね。新しいサービスにありがちなのですが、SaaSを運営する経営者からは、すべてのお客さんの声を解決しようとすると違う製品になってしまうという話をよく聞きます。
ITreviewの開発・プロダクトチームには、ヘンリー・フォードの「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」という言葉を使って話すのですが、お客様は必ずしも自分のニーズとテクノロジーが一致しません。テクノロジーは、開発しているものが一番よく知っているんです。なので、すべての顧客の声「早い馬が欲しい」に応えるわけではなくて、お客さんの真のニーズ「早く移動したい」という真の課題に向き合わなければならないということを伝えます。
ですが、直接顧客との接点を持っている現場だと、この考え方は意外と難しいのではないかと感じています。この辺りはどう思いますか?
松田:そこは、かなり大胆にやっています。開発側としては、お客様から上がってくるフィードバックはすべて事前に想定し尽くすつもりで、何千回もシミュレーションしてプロダクトを開発しています。
SaaSで市場のリーダーを取っていくということは、ソートリーダーシップを発揮する必要があります。「我々はこういう思いで、このように皆さんのライフスタイルを変えるために、こういう製品の開発をしています」というメッセージは必ず持っていなければなりません。
実は、レビューに限らず、UMUのお客様は導入直後にむちゃくちゃたくさんのフィードバックをいただけます。ですが、我々はそれら全ての問いに対して、学習の科学、認知科学、心理学観点など学術的な観点を添えて回答できるようにしています。
フィードバックにきちんと答えられるということは、市場の方向性を理解した開発ができているということの何よりの証拠であることに加え、あらかじめシミュレーションしておくことでお客様の真のニーズに応えることもできます。
旧来の古い考え方が中心になっている業界であっても、ソートリーダーシップとテクノロジカルリーダーシップの2つでお客様に向き合っていくことで、確実に味方にすることができます。
先ほどのフォードの話ではないですが、UMUの開発創業者がすぐに出すのは、アイフォンとブラックベリーの話です。ユーザーボイスの全てを集めて作った最高の機械がブラックベリー。誰も求めていなかったけれど、これが世の中を変えると思って作られたのがアイフォンだと。我々は、シリコンバレースピリットのもと、アイフォン側をいこうという想いを持ってやっています。
徐々に日本の企業でも顧客の声に向き合う流れが出てきていますが、全社をあげて顧客の声に向き合っていくために、どのような工夫をされていますか?
松田:仕組みとして作っていますね。
スタッフが毎日書く日報で、マーケットインサイト、カスタマーインサイト、プロダクトインサイト、ソリューションインサイト、それにセルフリフレクションの5つの項目を必ず書くようにしています。その報告の中には、必ずお客様の声を反映するようにしており、全スタッフの日報が毎日シェアされます。日本はまだ40名弱の組織ですが、200名近くいるグローバルを含めてシェアされ、もちろん、プロダクトマネージャーはこれを毎日チェックしています。
黒野:グローバルでシェアされているというのはすごいですね。我々がお付き合いしているグローバルベンダーさんの話を聞くと、本国がなかなか改善要望を聞いてくれないケースも多いようです。要望を理解してもらうために、日本のレビューを集めて渡したりしているようですが、結構大変らしいと聞いています。それが文化としてできているのはすごいと思いますね。
松田:ありがとうございます。ただ、今は翻訳もすごく簡単にできるので、日本語で書いても向こうで理解してくれているので、仕組みにしてしまえばそこまで難しくはないんですよ。
あと、グローバルは日本のマーケットをすごく大事にしてくれているんです。比較的早い段階で、日本生命さんなどの大手がUMU導入する際に、良質な開発のアイディアをたくさん出してくれています。そのこともあって、日本人の話を真面目に聞いて開発すれば、グローバルで売れるという成功パターンができているのです。
黒野:日本人の声を使うことでグローバルに繋がるというのは興味深い話ですね。
松田:やはり日本人は細かいですからね。その結果、グローバルに向き合えるクオリティができるのです。批判するわけではないですが、グローバルはどうしても雑な部分が目立ちます。その中ですごく繊細なサービスを展開しているので、UMUはグローバルでも受けがいいし、もっと言えばアメリカ人にも信頼されるようになっています。
黒野:御社のレビューをみていると、デザインが分かりやすいとか、使いやすいって言葉が結構ありました。外資の製品は、意外と「言葉が分かりにくい」とか「説明が分かりにくい」「デザインが分かりにくい」といったレビューが多いんですが、御社の場合は、そういうのがないのですごいなと思っていたんです。今回のお話を聞いて納得しました。
松田:あと、コロナ前は、開発創業者が毎月日本に来て、現地のマーケティングをやっていたことも大きいと思います。もちろん日本にばかりいたわけではありませんが、国ごとの実情をしっかり理解していました。
結果、コーポレートメッセージもリージョンによって変えています。Googleやappleがやっているようにその国に合う言葉でメッセージしようということで、我々も自分たちでメッセージ作っていいよと言われているのは大きいかもしれませんね。
今後、さらにビジネス成長が期待される中で、どのように顧客の声に向き合っていきたいと考えていますか?
松田:どんなに会社が大きくなっても、サービスが拡大しても、よりお客様に近い所にいるということは大事だと思っています。できれば対面、できなくてもオンラインでは、顧客の声を聞き続けていきたいと思います。そういった取組みの中で、ITreviewが素晴らしいと思うのは、ただのインターネット上の1コメントに留まらず、レビューを使って顧客と対話ができるレベルまで持っていけるということだと思っています。
これからも顧客との対話の中で、私たちも成長させていただくけれど、お客様にとっても有益なフィードバックができるように、インタラクションは大切にしていきたいと思っています。
カスタマーボイスに対して直接1件1件返すことはできなくなるかもしれませんが、我々の成長やプロダクトの開発によって「私のあの声がプロダクトのここに活かされている」というコミュニケーションは絶対にできるので、これからも大事にしていきたいと考えています。
  • 代表取締役 松田しゅう平

    ユームテクノロジージャパン株式会社
    代表取締役

    松田 しゅう平

    2008年から株式会社IPイノベーションズにてATDJapan設立及びATD活動啓蒙のため事務局活動に従事。
    ATDJapan元代表の浦山昌志と共にUMUやDegreedなどの最新ラーニングテクノロジーを日本に導入。2018年2月に浦山昌志と共にUMUテクノロジージャパンを設立。

  • ラーニングコンサルタント 金融事業部 本部長 志村 智生

    ユームテクノロジージャパン株式会社
    ラーニングコンサルタント 金融事業部 本部長

    志村 智生

    株式会社オウケイウェイヴにて企業内ナレッジマネジメント業務を経て現職。ユームテクノロジーが持つAIテクノロジーと教育学要素を用い、日本で初めてオンラインとオフラインのハイブリット型の人材育成環境を確立。
    現在は日本の金融部門を、「ハイパフォーマーを生み出し続け、自分らしく居続けられる世界にする」ため、個別化された循環型の教育環境の構築アドバイス活動を拡げている。